歯みがきを科学しよう

◆歯ブラシの毛先は、歯の間には入らない!
歯みがきの時、歯ブラシだけしか使わない人が多いのは、先進国では日本だけです。

写真をご覧ください。歯と歯の間に歯ブラシの毛先が入っているかどうか、推奨されているブラッシング圧100gで実験しています。思った以上に入っていません。ところが、フロスは確実に入っていますね。フロスをする習慣がない──これこそが、多くの日本人が歯で悩む、大きな原因の一つです。

みなさんは食事の後、汚れたお鍋やフライパンをブラシで洗った経験があると思いますが、その時必ず面に対して毛先は直角に当てますよね(〇)。決して横向きに当てませんよね(×)。
これは皆さんが経験上、そのように当てないと汚れが取れないことを学習されて、自然と身についているものです。
これを歯ブラシで置き換えてみると、上の写真のように歯と歯の間にはそもそも毛先がほとんど入りませんが、もし入ったとしても、歯の表面に対して毛先が×のように平行に当たるので、歯垢(細菌)はほとんど取れないのです。

「歯と歯の間」の面積(図の赤い部分)を全部足した面積は、歯の外周りを全部足した面積よりも広く、手の甲部分とほぼ同じです。
そこに1~2㎜ぐらいの厚みで、歯垢(細菌)がバイオフィルム=ネバネバの塊になっているとイメージしてみてください。あなたの体の中で最も多い、何兆個というすさまじい数の細菌がいる場所です。これが歯と歯の間からむし歯、歯周病、さらに身体全体に、悪影響を与えているのです。
まさに皆さんの口の中は、細菌にとって好条件の揃った養殖場となっているのです。

 

 

◆歯周ポケットに歯ブラシの毛先は入るのか?
最近、「毛先が歯周ポケットに入る」と宣伝されている歯ブラシを見かけます。歯周病である基準は「歯周ポケットの深さ4㎜」ですが、その中の歯垢を掻き出すために、毛先が4㎜入ることは、可能でしょうか?

 

歯ブラシの毛が1列なら可能ですが(①)、通常の歯ブラシは毛が3列あります。歯肉ポケットを狙って毛先を向けて入れようとしても、歯面・歯肉に当たり、入りにくいのです(③)。ブラッシング圧100gぐらいでは全然入りません(上の写真はブラッシング圧200gでやっていますが、全然ダメです)。